コーヒー常飲者が睡眠不足のときに水素水を飲むと起こること
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論文28「コーヒー常飲者が睡眠不足のときに水素水を飲むと起こること」
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Hydrogen-rich water and caffeine for alertness and brain metabolism
in sleep-deprived habitual coffee drinkers
コーヒー常飲者が睡眠不足のときに水素水を飲むと起こること
(10秒で読めるまとめ)
日常的にコーヒーを飲む健康な男女に、睡眠不足の状態で水素水とカフェインを飲ませ、脳に与える影響を調べた結果、水素がカフェインより多くの脳領域に作用して優れた覚醒効果を発揮することがわかり、水素水を飲んだことによる副作用は現れなかった。
(1分で読めるまとめ)
◆結論
水素はカフェインとは異なる脳の領域に作用し、副作用なく優れた覚醒効果を発揮する。
◆ポイント
· 代表的な覚醒物質であるカフェインにはデメリットとして離脱症状(頭痛・疲労感・脳霧など)があるが、この研究では、副作用がないことで知られる水素について、その覚醒作用をカフェインと比較しながら評価した。 |
· コーヒーに慣れている健康な男女16名を睡眠不足+絶食状態においた後、全員に ①水素水、②カフェイン、③水素水+カフェイン、④水道水 の4通りすべてを飲ませ、脳代謝や認知機能の変化を比較した。 |
· 水素水を1回飲んだ後、注意力・記憶力・処理速度などの認知機能を測るテスト(TMT・SDMT)のパフォーマンスが大きく向上した。 |
· 12のさまざまな脳領域において脳代謝(コリン/クレアチン比)の変化を調べたところ、カフェインは5か所、水素水(および水素水+カフェイン)は8か所でこの比を大きく増加させた。(論文中の図表参照) |
· 水素水を飲んだことによる副作用の報告はなかった。 |
(原文と翻訳)
Abstract
The main aim of this randomized-controlled cross-over interventional trial was to assess the acute effects of taking a single dose of hydrogen-rich water (HRW), and compare it with caffeine, HRW plus caffeine, and control water, for alertness, brain metabolism, brain and oxygen saturation, and self-reported adverse events in healthy men and women who were habitual coffee drinkers and were sleep-deprived for 24 hr.
【目的】この無作為割付クロスオーバー試験の主な目的は、習慣的にコーヒーを飲む健康な男女が24時間寝ていない状態で、水素水を1回服用した場合の急性効果を評価すること。また、水素水、カフェイン、水素水とカフェイン、対照水を与えたときの、注意力、脳の代謝、脳と酸素飽和度、および有害事象(自己申告)について比較すること。
Sixteen apparently healthy young adults (8 men and 8 women; age 24.0 ± 3.5 years) were allocated in a cross-over design to receive a single-dose drink of HRW (8 ppm), caffeine (50 mg), HRW plus caffeine, or control drink (tap water) in the morning after 24-hr sleep deprivation and 12-hr fasting. The primary and secondary outcomes were assessed at baseline (pre-intervention) and 15-min follow-up.
【方法】いたって健康な若年成人16名(男性8、女性8、年齢24.0±3.5歳)がクロスオーバーデザインで割り当てられ、①水素水(8 ppm)、②カフェイン(50 mg)、③水素水とカフェイン、④対照(水道水) を、24時間の睡眠不足と12時間の断食後の朝に単回投与(飲料)した。一次・二次の結果は、介入前および15分間のフォローアップで評価された。
Significantly less time was needed to complete trail-making test after both HRW and HRW plus caffeine compared with the control drink (p < .05). The number of errors in the symbol digit modalities test was significantly lower after drinking HRW or caffeine than control drink (p < .05). Both HRW and caffeine significantly increased the choline-to-creatine ratio in several brain regions (frontal white and gray matter), while HRW and the combination intervention also affected brain metabolism in the paracentral brain. No participants reported any side effects from any intervention.
【結果】水道水と比較して、水素水(または水素水+カフェイン)を飲んだ後では、TMT完了までの時間が大幅に短縮された(p < .05)。水素水とカフェインのSDMTテストのエラー数は、水道水よりも有意に低かった (p < .05)。水素水とカフェインの両方が、いくつかの脳領域(前頭葉の白質・灰白質)でコリン/クレアチン比を大幅に増加させ、水素水(または水素水+カフェイン)は、同時に中心傍小葉の脳代謝にも影響を与えた。副作用を報告した参加者はいなかった。
The attention enhancement driven by HRW appears along with changes in brain metabolism. Being generally recognized as a safe intervention, hydrogen could be thus recommended as a novel intervention that upholds attention in stressed conditions, with its metabolic footprint likely different from caffeine.
【結論】水素水による注意力の向上は、脳の代謝の変化とともに現れる。一般的に安全な介入として認識されている水素は、その代謝フットプリントがカフェインとは異なる可能性が高いため、ストレス状態で注意を維持する新しい方法として推奨することができる。
Keywords: alertness覚醒; brain metabolism脳代謝; choline-to-creatine ratioコリン/クレアチン比; hydrogen水素; sleep睡眠.
© 2021 The Authors. Food Science & Nutrition published by Wiley Periodicals LLC.
Conflict of interest statement: The authors declare no conflicts of interest.
【利益相反】なし
英語 | 日本語 | 説明 |
randomized-controlled cross-over interventional trial | 無作為割付クロスオーバー試験 | 無作為割付:複数の治療法を比較する際、作為が入らないよう被験者をランダムに割り当てること。
クロスオーバー試験:被験者が全ての条件に参加する試験。 |
caffeine, | カフェイン | 世界で最も広く使われている精神刺激薬。アデノシン受容体に拮抗することで覚醒、解熱鎮痛、強心、利尿作用を示す。過剰摂取はめまい、心拍数増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気などの不調を起こす。 |
アデノシン受容体 | 疲労に伴い体内で産生されるアデノシンという物質がアデノシン受容体に結合すると、覚醒作用のある神経伝達物質「ヒスタミン」の放出が抑えられ眠くなる。カフェインはアデノシンに代わりアデノシン受容体に結合することで、ヒスタミンの放出抑制を阻害し、覚醒作用を発揮する。 | |
adverse events | 有害事象 | 投与された医薬品との因果関係の有無を問わず、医薬品の使用によって生じたあらゆる好ましくない有害な反応、医療上のできごと。 |
trail-making test(TMT) | トレイルメイキングテスト | 注意力、視力、記憶力、処理速度を測定するテスト。認知機能の問題を発見するのに役立つ。テストを完了するまでにかかった時間が長いほど、「認知障害の程度が高い」ということ。 |
symbol digit modalities test(SDMT) | 数字モダリティー検査 | 注意力、精神運動速度、視覚処理能力、およびワーキングメモリ(作業記憶)から認知機能の程度を調べ、認知障害を評価するテスト。 |
frontal | 前頭葉 | 睡眠不足で最初にダメージを受ける脳機能の1つが「全身の司令塔」といわれる前頭葉。大脳の前部分に位置し、機能が低下すると、意欲や感情の抑制力、集中力・注意力・判断力などが低下し、作業効率も著しく落ちる。 |
white matter | 白質 | 灰白質の内側にある神経細胞の連絡路(神経線維で構成される領域)のこと。学習や脳機能に影響を与える。 |
gray matter | 灰白質 | 脳の表面の神経細胞が密集する部分のこと。白質の対語。ニューロンの代謝や情報処理の中心となる神経領域。 |
choline | コリン | 循環器系と脳の機能、細胞膜の構成・補修に不可欠な水溶性の栄養素。記憶や学習に強く関係している神経伝達物質「アセチルコリン」のもとになる物質。 |
アセチルコリン | 神経細胞から放出される神経伝達物質。血管を拡張させて血圧を下げる効果があり、脳内のアセチルコリンが増えることで、記憶保持や脳機能向上など、認知症のさまざまな症状を改善する。 | |
creatine | クレアチン | エネルギー代謝のマーカー。脳のエネルギーバランスに影響を与え、特にストレス下(低酸素症、精神的疲労、睡眠不足等)の認知能力、脳機能、を改善し、ストレス耐性を促進する。脳内での濃度は比較的一定している。 |
choline-to-creatine ratio | コリン/クレアチン比 | 脳の生存能力の指標。脳の領域別のコリン/クレアチン比が認知機能に関係していることが、2008年Ben Salemの研究で確認されている。 |
brain metabolism | 脳の代謝 | 脳は臓器の中で一番酸素の消費量が多く、酸素とエネルギー(ブドウ糖)の消費量は全摂取量の約25%にのぼる。頭を使うとブドウ糖が消費され、ブドウ糖が極端に減ると、エネルギー不足で神経細胞がどんどん死んでいき、危険な状態に陥る。 |
ブドウ糖 | 食事で得られる最も基本的なエネルギー源。 | |
paracentral brain | 中心傍小葉 | 大脳の内側面にある『しわ』の隆起した部分(脳表面にある凹凸のうち、凸の部分)。体性感覚および運動出力と関わる情報処理において様々な役割を担っていると考えられている。 |
metabolic footprint | 代謝フットプリント | 代謝の領域、経路のこと。 |