水素の歯周病緩和・予防効果
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Molecular hydrogen suppresses Porphyromonas gingivalis lipopolysaccharide-induced increases in interleukin-1 alpha and interleukin-6 secretion in human gingival cells
水素の歯周病緩和・予防効果
(10秒で読めるまとめ)
ヒト歯肉細胞を用いた試験管内歯周病モデルにおける水素水の効果を調べた結果、水素が歯周病の炎症反応に関わるサイトカイン(IL-1α、IL-6)の産生を有意に抑制し、歯周病の治療・予防効果を示した。
(1分で読めるまとめ)
◆結論
水素は歯周病を緩和し、進展・悪化を予防する。
◆ポイント
· 炎症性疾患の1つである歯周病は、歯周病菌により歯肉に炎症がおきている
状態で、病原性が最も高い歯周病菌「Pg菌」は、糖尿病、動脈硬化、関節リウ マチ、アルツハイマーなどの病気と関係しているとの報告もある。 |
· in vitro歯周病モデル(試験管内でヒト歯肉上皮細胞をPg菌由来LPSに暴露し
たもの)を用いて、高濃度の水素を溶存させた培地における炎症関係サイトカ インの発現を測定した。 |
· in vitro歯周病モデルでは、歯周病の炎症反応に関わるサイトカイン(IL-1α、
IL-6)が大きく増加したが、水素はそれらの増加を有意に抑制した。 |
· 水素は細胞毒性を引き起こさなかった。 |
(原文と翻訳)
Abstract
Periodontitis is defined as a multifactorial polymicrobial infection accompanied by inflammatory reactions. Porphyromonas gingivalis (Pg) is known as a major pathogen in the initiation and progression of periodontitis, and a major virulence factor is Pg lipopolysaccharide (LPS). Molecular hydrogen (H2) has been reported to act as a gaseous antioxidant, which suppresses periodontitis progression by decreasing gingival oxidative stress. However, no human periodontitis model has examined the anti-inflammatory effects of H2.
【背景】歯周病は、炎症反応を伴う多因子性の多菌種感染と定義される。ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg)は歯周病の発症と進行における主要な病原体とされ、主要な毒性因子はPg LPSである。水素はガス状の抗酸化物質として作用することが報告されており、歯肉の酸化ストレスを減少させることで歯周病の進行を抑制する。しかし、人間の歯周病モデルでは、水素の抗炎症効果はまだ検証されていない。
In this study, we examined the effects of H2 on Pg LPS-induced secretion of 8 types of inflammation markers in a human periodontitis model using human gingival cells with enzyme-linked immunosorbent assays.
【方法】この研究では、ヒト歯周病モデルの歯肉細胞を用いて、Pg LPSが誘発する8種類の炎症マーカーの分泌に対する水素の影響を、ELISA法により調査した。
Our results demonstrated that Pg LPS increased interleukin (IL) 1 alpha (IL-1α) and IL-6 secretion, but H2 significantly suppressed the secretion of both cytokines without cytotoxicity. H2 can suppress the production of IL-1α and IL-6, which are identified as cytokines involved in inflammatory reactions in periodontal disease. Thus, H2 may provide therapeutic applications for periodontitis.
【結果】Pg LPSがIL-1αとIL-6の分泌を増加させた一方、水素は両サイトカインの分泌を有意に抑制した。また、水素は細胞毒性を引き起こさずに、IL-1αとIL-6の産生を抑制した。これらのサイトカインは、歯周疾患における炎症反応に関与するものとして特定されている。
Conclusion: The data of the present study indicate that hydrogen water has an antibacterial effect on microorganisms associated with chronic periodontitis.
【結論】水素は、歯周病の治療において有用な応用が考えられる。
Keywords: Human gingival cellヒト歯肉細胞; Interleukin-1αインターロイキン-1α; Interleukin-6インターロイキン-6; Molecular hydrogen分子状水素; Periodontitis歯周炎; Porphyromonas gingivalis Pg菌.
© 2021. The Author(s), under exclusive licence to Springer Science+Business Media, LLC, part of Springer Nature.
英語 | 日本語 | 説明 |
Periodontitis | 歯肉炎 | 歯肉(歯ぐき)が炎症を起こして、赤くは
れたり出血したりする歯周病の初期段階。 歯と歯や歯と歯肉のすき間にたまった歯垢中 の細菌の毒素や酵素により歯を支える組織が 刺激され、歯肉が炎症を起こす。 |
歯周病 | 歯肉炎・歯周炎の総称。炎症が歯肉だけの
比較的軽度のものを「歯肉炎」、炎症が歯 槽骨や歯根膜にまで広がったものを「歯周 炎」と呼ぶ。 |
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Human gingival cell | ヒト歯肉細胞 | 歯肉(歯茎)から取られるヒトの細胞。歯
周環境の研究や歯周疾患に関連する研究で 使用される。 |
Porphyromonas gingivalis(Pg) | ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌) | 歯周病菌の王様と呼ばれ、病原性が最も高
い菌。血液をエサとし酸素を嫌う。血液を 得て数百・数万倍に増殖すると、骨を破壊 し歯周ポケット(歯と歯肉の間の溝)をど んどん深くする。この細菌は近くの毛細血 管の壁を通りぬけて血管内に達することが でき、全身に運ばれ様々な臓器で疾患に関 わる。 |
Pg LPS | Pg由来 LPS | ポルフィロモナス・ジンジバリス
(Porphyromonas gingivalis,Pg菌)という 細菌のリポ多糖(LPS)のこと。歯周疾患 の進行や炎症の引き金となる。 |
LPS | リポ多糖 | 細菌の外膜に存在する成分で、免疫系の
活性化や炎症反応の誘発に関与する。 脂質及び多糖から構成される(糖脂質)。 糖質は水に溶け、脂質は油に溶けるため、 両方の性質を持つLPSは水と油の両方に 溶ける。 |
enzyme-linked immunosorbent assays | ELISA法 | 試料溶液中に含まれる目的分子を抗原抗
体反応と酵素反応を利用して高感度に検 出・定量する方法。 |
Interleukin-1α | インターロイキン-1α | 歯周病における炎症反応に関わる重要な
免疫タンパク質(サイトカイン)。免疫 応答に関与するタンパク質で、細胞間で 情報を伝達する役割を果たす。 |
Interleukin-6 | インターロイキン-6 | 歯周病における炎症反応に関わる炎症性
サイトカイン。免疫応答や炎症、細胞増 殖などに関与する。 |
cytokines | サイトカイン | 細胞から分泌される生理活性物質。細胞
間の情報伝達係で免疫反応の調整を行う。 |
in vitro | in vitro | 試験管内で人工的に再現された疾患モデ
ルのこと。本研究では、高濃度の水素を 溶存させた培地(水素含有培地)を用い た。 |
培地 | 微生物や生物組織の培養において、培養
対象に生育環境を提供するもの。 |