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論文3

 

 

 

Molecular hydrogen downregulates

 acute exhaustive exercise-induced skeletal muscle damage

水素は筋肉痛の有害な側面を抑制する

 

 

(10秒で読めるまとめ)

普段は動かないネズミを水素ガスの中で疲れ切るまで走らせ、筋肉痛を引き起こす因子の数値を測定した結果、水素がもつ抗酸化・抗炎症・抗アポトーシス(細胞死)作用により、筋肉痛の有害な側面が効果的に抑えられることがわかった。

 

(1分で読めるまとめ)

◆結論

水素ガスを吸うと、激しい運動後に起こる筋肉痛の有害な側面を効果的に抑えられることがわかった。

◆ポイント

·         慣れない人が急に激しい運動をすると、老化やがんの原因になる

細胞の酸化・炎症、細胞死が増加し、

筋肉が有害なダメージを受ける(筋肉痛の原因)。

·         水素がこのダメージにどう作用するのか検証した。
·         普段動かないネズミを、水素またはそれ以外のガスが密閉された

踏み車の中で疲れ切るまで走らせ、筋肉痛を引き起こす因子の

数値を比較した。

·         水素ガスを吸ったネズミでは、酸化による細胞損傷の値(TBARS)

の上昇が鈍くなり、炎症や細胞死に対処しようとする反応

(NF-κBリン酸化、caspase-3の発現)も緩やかになった。

 

(原文と翻訳)

Abstract

Physical exercise-induced skeletal muscle damage may be characterized by increased oxidative stress, inflammation, and apoptosis which may be beneficial when exercise is regular, but it is rather harmful when exercise is exhaustive and performed acutely by unaccustomed individuals.

Molecular hydrogen (H2) has emerged as a potent antioxidant, anti-inflammatory, and anti-apoptotic agent, but its action on the deleterious effects of acute exhaustive exercise in muscle damage remain unknown.

【背景】運動によって生じる筋肉のダメージは、酸化ストレス、炎症、アポトーシス(細胞死)の増加によるものだと言える。定期的な運動をする場合は有益にもなるが、普段運動に慣れていない人が急に激しい運動をすると有害となる。

水素(H2)は強力な抗酸化剤、抗炎症剤、および抗アポトーシス剤として世に出ているが、その有害な筋肉ダメージへの作用はまだ知られていない。

 

 

Therefore, we tested the hypothesis that H2 decreases acute exhaustive exercise-induced skeletal muscle damage of sedentary rats.

【目的】そこで、「水素は急に激しい運動をした時に生じる筋肉のダメージを軽減させる」という仮説を立て、ネズミを使って検証した。

 

 

Rats ran to exhaustion on a sealed treadmill inhaling an H2-containing mixture or the control gas. We measured oxidative stress (SOD, GSH, and TBARS), inflammatory (TNF-α, IL-1β, IL-6, IL-10, and NF-κB phosphorylation), and apoptotic (expression of caspase-3, Bcl-2, and HSP70) markers.

【方法】普段動かないネズミを、水素またはそれ以外のガスを吸入させる密閉された踏み車の中で疲れ切るまで走らせ、酸化ストレス値(SOD、GSH、TBARS)、炎症値(TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-10、NF-κBリン酸化)、アポトーシス値(カスパーゼ-3、Bcl-2 、HSP70の発現)を測定した。

 

 

Exercise caused no changes in SOD activity but increased TBARS levels. H2 caused increases in exercise-induced SOD activity and blunted exercise-induced increased TBARS levels.

We observed exercise-induced TNF-α and IL-6 surges as well as NF-κB phosphorylation, which were blunted by H2. Exercise increased cleaved caspase-3 expression, and H2 reduced this response.

【結果】水素によりSODが活性化され、運動により増加したTBARS値の上昇を鈍らせた。

運動によって引き起こるNF-κBリン酸化と、TNF-αとIL-6の変動も、水素により鈍化した。運動により、活性化したカスパーゼ-3の発現も増えたが、水素はこの反応も縮小させた。

 

 

In conclusion, H2 effectively downregulates muscle damage, reducing oxidative stress, inflammation, and apoptosis after acute exhaustive exercise performed by an unaccustomed organism.

【結論】水素は筋肉のダメージを効果的に抑え、普段運動しない動物が急に激しい運動をしたときに起こる酸化ストレス、炎症、アポトーシスを抑制する。

 

 

Keywords: apoptoseアポトーシス(フランス語); apoptosisアポトーシス; cytokinesサイトカイン; dérivés réactifs de l’oxygène活性酸素(フランス語); inflammation炎症; oxidative stress酸化ストレス; reactive oxygen species活性酸素; stress oxydatif 酸化ストレス(フランス語).

 

 

英語 日本名 説明
skeletal muscle 骨格筋 一般に「筋肉」と呼ばれているもの。

骨格に沿って関節をまたぐようについてい

る筋肉のこと。

oxidative stress 酸化ストレス 活性酸素が身体を酸化させようとする力の

こと。

紫外線や喫煙、強い精神的ストレス、激しす

ぎる運動などが要因となり起こる。蓄積する

と老化が進み、シワ・白髪、緑内障・白内障、

がんなどの要因になる。

活性酸素 ほかの物質を酸化させる(サビさせる)力が

非常に強い酸素。

殺菌力が強く体の中に入ってきた細菌や

ウイルスを撃退するが、増えすぎると正常な

細胞や遺伝子も攻撃(酸化)する。

通常、呼吸で取り入れる酸素のうち約2%が

活性酸素になるが、激しい運動をすると

呼吸量が急増するため、体内の活性酸素も

増える。

apoptosis

 

アポトーシス 細胞の自然死(細胞死)のこと。細胞が

構成している組織をより良い状態に保つため、

細胞自体に組み込まれたプログラム。

SOD(Superoxide dismutase) スーパー・オキシド・ディスムターゼ 細胞内に発生した活性酸素を除去する

抗酸化酵素。

酸化ストレスから体を守り、

老化・がん・生活習慣病・脳卒中・心疾患など

の活性酸素が原因で起こる病気を予防する。

GSH(Glutathione) グルタチオン 活性酸素によるダメージから細胞を守る

抗酸化作用のほか、肝臓で異物の解毒作用

がある。人間の体内では特に皮膚や肝臓

などに多く含まれ、年齢や紫外線の影響に

よって減少しやすい。

TBARS (Thiobarbituric Acid Reactive Substances) チオバルビツール酸反応性物質 脂質過酸化反応のスクリーニングと

モニタリングに用いられる物質。

脂質過酸化反応 脂質の酸化的分解反応のこと。

フリーラジカルが細胞膜中の脂質から

電子を奪い、結果として細胞に損傷を

与える過程のこと。

フリーラジカル 偶数個必要な電子を奇数個しか

もっていないため不安定になっている

原子・分子のこと。

他の原子・分子から電子を奪い、酸化させる。

非常に反応性が強く、身体を構成する脂質や

たんぱく質を攻撃するため、

老化や病気の原因になる。

TNF-α (Tumor Necrosis Factor-α) 腫瘍壊死因子α サイトカインの一種。

不要な細胞を排除したり腫瘍をやっつけたり

するが、大量に産生されると腫れや痛みなどの

炎症や関節の破壊(関節リウマチ)

を引き起こす。

サイトカイン 細胞間の情報伝達係で、免疫反応の調整を

行うタンパク質のこと。

熱を出す、炎症を起こす、血圧を上げる

など様々な反応を引き起こし、身体に浸入した

細菌やウイルス等の異物を排除しようとする。

IL(-1β,-10) インターロイキン サイトカインの一種。免疫系細胞の分化、

増殖、細胞死に働く。

IL-6 インターロイキン-6 インターロイキンの一種。

免疫応答や炎症反応の調節をする役目をもつ。

NF-κB (nuclear factor-kappa B) 転写因子κB 急性炎症の免疫反応の調節をする因子。

急性・慢性炎症反応や細胞増殖、

アポトーシスなどの数多くの生理現象に

関与する。

ストレスやサイトカイン、紫外線等の

刺激により活性化し、炎症、細胞増殖、

細胞の生存を調節する遺伝子の制御に関わる。

phosphorylation リン酸化 タンパク質の機能や活性の調節を行う

化学反応のこと。

caspase-3 カスパーゼ-3 アポトーシスと炎症の制御に関わっている

酵素。

アポトーシスを引き起こした細胞で

活性化される。カスパーゼ-3による調節が

なければ無差別に細胞死が引き起こされる。

cleaved caspase-3 活性化されたカスパーゼ-3のこと。
Bcl-2 (B-cell lymphoma-2) Bcl-2タンパク質 ヒトの原ガン遺伝子。アポトーシスを

阻害または促進する。Bcl-2 タンパク質が

沢山あると、細胞をアポトーシスによる早期死

から防御する。

原ガン遺伝子 通常の細胞分裂を調節する遺伝子。

異常に発現したり変異を起こしたりすると、

がん遺伝子になる。

HSP70 (Heat Shock Protein 70) 熱ショックタンパク質 細胞が熱・寒さ・酸素欠乏などのストレスに

さらされると発現するタンパク質。

ストレスに立ち向かい、損傷を受けた細胞を

修復・整備する働きをもつ。