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論文4

 

 

 

 

Molecular hydrogen improves type 2 diabetes

through inhibiting oxidative stress

水素は酸化ストレスを抑えることで糖尿病を改善する

 

 

(10秒で読めるまとめ)

糖尿病のネズミに水素治療を行ったところ、酸化ストレスや炎症から体を守りながら高血糖を改善し、原因臓器の病変を軽減させるという、安全性の高い治療効果を発揮した。

 

 

(1分で読めるまとめ)

◆結論

水素は、酸化ストレスや炎症を防ぎながら高血糖を下げ、原因臓器の病変も軽減しながらより安全に糖尿病を治療することがわかった。

◆ポイント

·       2型糖尿病のネズミを「水素治療をする個体」、「糖尿病治療薬を使う

個体」、「何もしない個体」等に分け、それぞれ治療0日目と80日目に病状

や酸化ストレスを表す数値を比較し、糖尿病の原因臓器から採取した細胞の

状態もチェックした

·       水素治療により、インスリンの効き目が改善し、糖尿病の程度を表す値

(空腹時血糖)が明らかに下がった。

·       何もしなかった個体と、糖尿病治療薬を使った個体では、酸化ストレス

から体を守る酵素(SOD)の値が下がったが、水素治療ではこの値が上

がった。(論文中の図表参照)

·       糖尿病治療薬を使った個体では、高血糖を改善しながらも酸化による

細胞損傷の値(MDA)が上がったが、水素治療ではこの値も下がった。

(論文中の図表参照)

 

 

 

(原文と翻訳)

Abstract

The aim of the present study was to investigate the potential therapeutic effects of molecular hydrogen on type 2 diabetes mellitus (T2DM) in rats.

【目的】この研究の狙いは、2型糖尿病における水素の隠れた治療効果をネズミで調査することである。

 

Following maintenance on a high-fat diet for 4 weeks, a T2DM model was established using an injection of 30 mg/kg streptozotocin via the caudal vein into Sprague-Dawley rats.

On day 0 and Day 80, the blood samples were obtained from each rat for the measurement of biochemical indicators including blood lipids, fasting blood glucose, hepatic glycogen, fasting serum insulin, insulin sensitivity index, insulin resistance index, serum superoxide dismutase (SOD) and serum malondialdehyde (MDA) using an automatic biochemical analyzer. The kidneys and pancreas tissues were harvested for HE staining and Western blot assay of toll-like receptor 4 (TLR4), myeloid differentiation primary response 88 (MyD88), phosphorylated (p)-p65, p65, p-IκB and IκB.

【方法】高脂肪食を4週間続けたネズミ(SDラット)に、30 mg/kgのストレプトゾトシンを尾静脈から注射して2型糖尿病(T2DM)モデルを確立した。

(論文中の図表参照:効果を比較するため、糖尿病治療薬メトホルミンで治療するネズミ、水素治療をするネズミ、何の治療もしないネズミ等に分けて)治療0日目と80日目に、生化学自動分析装置を使用して各ネズミから血液サンプルを採取し、血中脂質、空腹時血糖、肝グリコーゲン、空腹時血清インスリン、インスリン感受性指数、インスリン抵抗性指数、血清スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、血清マロンジアルデヒド(MDA)などの生化学的指標を測定した。また、腎臓および膵臓組織を採取して、トール様受容体4(TLR4)、MyD88、リン酸化(p)-p65とp65、p-IκBおよびIκBのHE染色とウエスタンブロット分析を行った。

 

The results showed that in rats with T2DM, molecular hydrogen treatment decreased fasting blood glucose levels, increased hepatic glycogen synthesis and improved insulin sensitivity. Treatment with molecular hydrogen also increased the production of SOD whilst decreasing the production of MDA.

In addition, molecular hydrogen alleviated the pathological changes exhibited by pancreatic islets and kidney during T2DM. Mechanistically, molecular hydrogen decreased TLR4 and MyD88 expression levels whilst also decreasing p65 and NF-κB inhibitor phosphorylation.

【結果】T2DM(2型糖尿病)のネズミでは、水素治療により空腹時血糖値が低下し、肝臓のグリコーゲン合成が増加し、インスリン感受性が改善した。また、SODの生成も増加し、MDAの生成は減少した。

さらに、水素分子は2型糖尿病を患う間に膵島と腎臓で見られる病理学的変化も軽減した。仕組みを説明すると、水素分子はTLR4とMyD88の発現値を低下させ、p65とNF-κB阻害剤のリン酸化も低下させた。

 

In conclusion, molecular hydrogen exerted therapeutic effects against T2DM by improving hyperglycemia and inhibiting oxidative stress through mechanisms that are associated with the TLR4/MyD88/NF-κB signaling pathway.

【結論】 水素は、TLR4 / MyD88 /NF-κBシグナル伝達経路に関連するメカニズムを通じて、高血糖を改善し、酸化ストレスを阻害することにより、2型糖尿病に対して治療効果を発揮した。

 

Keywords: hyperglycemia高血糖; molecular hydrogen水素分子; oxidative stress酸化ストレス; type 2 diabetes2型糖尿病.

 

Copyright: © Ming et al.

 

 

英語 日本名 説明
type 2 diabetes mellitus (T2DM) 2型糖尿病 一般的に「糖尿病」と呼ばれる

生活習慣病。40歳以上に多い。

血液中のブドウ糖(血糖)が正常より

多くなる病気で、遺伝的な体質

(インスリン分泌低下、インスリン

抵抗性)に、過食(特に高脂肪食)、

運動不足、肥満が加わることで起こる。

日本における糖尿病の95%以上は

2型糖尿病で、現在も増え続けている。

インスリン 血糖値を下げる唯一のホルモンで、

膵臓のβ細胞で産生される。

血中を流れるブドウ糖が、肝臓、

脂肪細胞、骨格筋細胞に取り込まれる

よう促し、炭水化物、タンパク質、脂肪

の代謝を調節する。

pancreatic islets 膵島 膵臓を構成する内分泌組織で、

血糖調節を行う。

膵島にはα細胞、β細胞、その他ごく少数の

働きの違う細胞がある。

β細胞 膵島でインスリンとアミリンの合成と分泌

を行う細胞。

血糖が上昇した場合に血糖を低下させる

ホルモンであるインスリンを分泌する。

ヒトでは、膵島の細胞の50–70%を

β細胞が占める。

1型糖尿病や2型糖尿病の患者では、

β細胞の細胞量と細胞機能がともに低下し、

インスリン分泌不全と高血糖症が

引き起こされる。

streptozotocin ストレプトゾトシン 哺乳類の膵臓のβ細胞への毒性を持つ、

天然由来の有機化合物。

動物実験用試薬として、

高用量で1型糖尿病、低用量で2型糖尿病

のモデル動物を作成する際に用いられる。

Sprague-Dawley rats SDラット(スピローグドーリーラット) ネズミの種類。非近交系のアルビノラット

のこと。

おとなしい性格で扱いやすいため、実験に

よく用いられる。

非近交系 「血縁が遠い関係にある、あるいは

まったく関係のない個体間の交配により

得られる」という意味。その子孫は十分

な遺伝的多様性を保持する。

blood lipids 血中脂質 血液中に含まれる脂質のこと。主にLDL

(悪玉)コレステロールとLDL(悪玉)

コレステロール、中性脂肪で構成される。

fasting blood glucose 空腹時血糖 糖尿病の診断のために測定される

数値の一つ。

一日の中で波のように変動する血糖値

のうち、比較的変化が小さいタイミング

である空腹時(10時間以上食事を摂ら

ない状態)に測定した値のこと。

hepatic glycogen 肝臓グリコーゲン 肝臓に蓄えられた糖質のこと。血糖を

常に一定に保ちながら、空腹時には糖質

の供給源としての役割を果たしている。

fasting serum insulin 空腹時血清インスリン 空腹時(10時間以上食事を摂らない状態)

の血中のインスリン濃度のこと。

insulin sensitivity インスリン感受性 膵臓から分泌されるインスリンの量と、

それが全身の細胞でしっかり作用して

いるかのバランスを見る指数。

“インスリン感受性が低い”または、

“インスリン抵抗性が高い”とは、

インスリンの分泌量は正常だが、

十分な効果を発揮していない状態を言う。

insulin resistance インスリン抵抗性 インスリンが効きにくくなった

状態のこと。

インスリンに対する感受性が低下し、

食後に上がった血糖値を正常範囲に

戻すために過剰なインスリンを必要

とする状態。

serum 血清 血液が凝固したあとの透明な黄色い

液体成分。

superoxide dismutase (SOD) スーパー・オキシド・ディスムターゼ 細胞内に発生した活性酸素を除去する

抗酸化酵素。

酸化ストレスから体を守り、老化・がん

・生活習慣病・脳卒中・心疾患などの

活性酸素が原因で起こる病気を予防する。

malondialdehyde (MDA) マロンジアルデヒド 脂質過酸化物の分解物として生成される

化合物であるため、脂質過酸化の主要な

マーカーとして測定される物質。

タンパク質変性やDNA損傷を引き起こす

ため、がんや糖尿病など様々な疾患研究

において測定対象とされている。

脂質過酸化 脂質の酸化的分解反応のこと。

フリーラジカルが細胞膜中の脂質から

電子を奪い、結果として細胞に損傷を

与える過程のこと。

フリーラジカル 他の原子・分子から電子を奪い、酸化

させる原子・分子のこと。

非常に反応性が強く、身体を構成する

脂質やたんぱく質を攻撃するため、

老化や病気の原因になる。

automatic biochemical analyzer 生化学自動分析装置 血液や尿などの体液成分を検体とし、

糖やコレステロール、タンパク、酵素

などの各種成分の測定を行う装置。

HE staining(Hematoxylin and eosin stain) ヘマトキシリン・エオシン染色

(HE染色)

医療診断で最も広く使用される

組織染色法の1つ。

細胞核と核以外の組織. 成分を青藍色

と赤色とにコントラストよく染め分ける

単純な染色法で、細胞の全体像を把握

する目的で使われる。

Western blot ウエスタンブロット タンパク質の特性を知るための

基本的な実験手法。

toll-like receptor 4 (TLR4) Toll様受容体4 自然免疫系を活性化する受容体。

通常の免疫反応に関わる一方で、

リガンドが多すぎる場合には細菌性

ショック(敗血症)を起こしうる。

各種自己免疫疾患の発症や病態において

重要な役割を担っている。

リガンド 特定の受容体(レセプタ)に特異的に

結合する分子。

標的タンパク質上の結合部位(受容体)

に結合することで生物学的反応を誘発

するシグナルを生成する。

myeloid differentiation primary response 88 (MyD88) MYD88 自然免疫および適応免疫応答において

中心的な役割を果たす細胞質アダプター

タンパク質。

インターロイキン1およびToll様受容体

シグナル伝達経路に不可欠なシグナル

伝達物質として機能し、多数の

炎症性遺伝子の活性化を調節する。

phosphorylated

phosphorylation

リン酸化 タンパク質にリン酸基を付加させる

化学反応のことで、タンパク質の機能や活性

の調節を行う。

p65 転写因子p65 NF-κBを構成するタンパク質

(NF-κB ファミリー)の一つ。

p-IκB 、IκB

(I kappa B)

抑制因子IκB 炎症反応の伝搬に関与する酵素の

複合体。転写因子NF-κBの活性を

制御する役目がある。

転写因子NF-κBは抑制因子IκBと結合

しているが、 IκBをリン酸化すること

で,抑制が解除されて活性化する。

NF-κB (nuclear factor-kappa B) 転写因子NF-κB 炎症の免疫反応や、細胞の発生・形成

の調節をする因子。

ストレスやサイトカイン、紫外線等の

刺激により活性化し、自然免疫、

適応免疫、炎症、ストレス反応、

細胞増殖、細胞の生存を調節する

遺伝子の発現を制御する。

サイトカイン 細胞間の情報伝達係で、免疫反応の

調整を行うタンパク質のこと。

熱を出す、炎症を起こす、血圧を上げる

など様々な反応を引き起こし、身体に

浸入した細菌やウイルス等の異物を

排除しようとする。

signaling pathway シグナル伝達経路 1個の細胞内で起こる一連の反応で、

それにより信号(シグナル)が

分子から分子へと次々に伝達

されていくもの。

細胞分裂やプログラム細胞死など、

様々な細胞機能の制御に使われる。

※論文の図表中の用語:Metformin メトホルミン

(メトグルコ、

グリコラン)

糖尿病治療でよく使われている

飲み薬。肝臓が体内に糖を放出するの

を抑制し、筋肉での糖利用をうながして、

血糖値を下げる。

高齢者や肝障害・腎障害がある人が

メトホルミンを服用すると、副作用として

乳酸アシドーシスを起こすことがある。

また、服薬する人の20〜30%に下痢や

食欲不振・腹痛などの副作用が現れる。

乳酸アシドーシス 乳酸が血液中に蓄積し血液が酸性に

なった状態。致死率が約50%と高い。

強い倦怠感・悪心や嘔吐・下痢・筋肉痛

といった症状が起こり、最終的には

昏睡状態になる。

乳酸 糖を分解する代謝過程で生じるもので、

体を動かすエネルギーとなる。

名前の通り「酸」であり、蓄積によって

その場所を酸性にする。