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論文51「2型糖尿病に対する水素吸入治療の有効性と安全性」
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Effectiveness and safety of hydrogen inhalation as an adjunct treatment in Chinese type 2 diabetes patients: A retrospective, observational, double-arm, real-life clinical study

2型糖尿病に対する水素吸入治療の有効性と安全性

 

 

 

(10秒で読めるまとめ)

水素吸入治療または糖尿病治療薬投与を継続した2型糖尿病患者1,603人の記録を比較分析した結果、水素吸入の継続は、血糖コントロール状態と空腹時血糖のより大きな改善を維持することがわかり、低血糖症などの有害事象の発生率も大幅に低かった。

 

 

(1分で読めるまとめ)

◆結論

 水素吸入の継続は、糖尿病をより包括的、効果的かつ安全に改善する。

◆ポイント

·  世界の糖尿病罹患率は2019年に9.3%にのぼり、過去数年間の抗糖尿病薬の

更新にも関わらず糖尿病患者の血糖コントロールの達成は安定せず、しばしば

有害事象も引き起こるため、より効果的かつ安全な治療方法の発見が待たれ

ている。

·  2型糖尿病患者1,603人を対象に、708人に水素吸入治療(週25時間以上)、

895人に糖尿病治療薬投与を行い、類似した被験者同士544組の記録を比較

分析して水素治療の効果を評価し、低血糖症や有害事象の記録から水素治療

の安全性も評価した。

·  水素吸入治療では、糖尿病治療薬と比較して、治療後のHbA1c

(血糖コントロール状態の指標)、空腹時血糖、総コレステロール、

インスリン抵抗性/分泌能の値で、より大きな改善が維持された。

·  水素吸入療法では、糖尿病治療薬と比較して、低血糖症(2.0%対6.8%)

、嘔吐(2.6%対7.4%)、便秘(1.7%対4.4%)、めまい(3.3%対6.3%

などの有害事象の発生率が有意に低く、全研究期間中に重篤な副作用は

記録されなかった。(論文本文参照)

 

 

(原文と翻訳

Abstract

Aim: To analyze the effectiveness and safety of hydrogen inhalation (HI) therapy as an adjunct treatment in Chinese type 2 diabetes mellitus (T2DM) patients in a real-life clinical setting.

【目的】実臨床の設定で、中国人2型糖尿病患者における水素吸入(HI)療法の補完治療としての有効性と安全性を分析すること。

 

Methods: This observational, non-interventional, retrospective, double-arm, 6-month clinical study included T2DM patients receiving conventional anti-diabetes medication with or without HI initiation from 2018 to 2021. Patients were assigned to the HI group or non-HI group (control group) after 1:1 propensity score matching (PSM). The mean change in glycated hemoglobin (HbA1c) after 6 months in different groups was evaluated primarily. The secondary outcome was composed of the mean change of fasting plasma glucose (FPG), weight, lipid profile, and homeostasis model assessment. Logistics regression was performed to evaluate the likelihood of reaching different HbA1c levels after 6-month treatment between the groups. Adverse event (AE) was also evaluated in patients of both groups.

【方法】この観察、非介入、後ろ向き、比較対照の6ヶ月臨床研究では、2018年から2021年までに従来の糖尿病治療薬の投与を受けている2型糖尿病患者を対象とし、1:1の傾向スコアマッチング(PSM)の後、患者は水素吸入(HI)グループまたは非-HIグループ(対照グループ)に割り当てられた。異なるグループでの6ヶ月後の糖化ヘモグロビン(HbA1c)の平均変化を主な評価項目とした。二次評価項目は、空腹時血糖(FPG)、体重、脂質検査、HOMAの平均変化で構成された。ロジスティック回帰分析を行い、6ヶ月間の治療後の異なるHbA1c値に到達する可能性をグループ間で評価した。両グループの患者における有害事象(AE)も評価された。

 

Results: In total, 1088 patients were selected into the analysis. Compared to the control group, subjects in HI group maintained greater improvement in the level of HbA1c (-0.94% vs -0.46%), FPG (-22.7 mg/dL vs -11.7 mg/dL), total cholesterol (-12.9 mg/dL vs -4.4 mg/dL), HOMA-IR (-0.76 vs -0.17) and HOMA-β (8.2% vs 1.98%) with all p< 0.001 post the treatment. Logistics regression revealed that the likelihood of reaching HbA1c< 7%, ≥ 7% to< 8% and > 1% reduction at the follow-up period was higher in the HI group, while patients in the control group were more likely to attain HbA1c ≥ 9%. Patients in HI group was observed a lower incidence of several AEs including hypoglycemia (2.0% vs 6.8%), vomiting (2.6% vs 7.4%), constipation (1.7% vs 4.4%) and giddiness (3.3% vs 6.3%) with significance in comparison to the control group.

【結果】総計1088人の患者が分析に選ばれた。対照グループと比較して、水素吸入グループの被験者は、治療後のHbA1c(-0.94% vs -0.46%)、空腹時血糖(-22.7 mg/dL vs -11.7 mg/dL)、総コレステロール(-12.9 mg/dL vs -4.4 mg/dL)、HOMA-IR(-0.76 vs -0.17)、HOMA-β(8.2% vs 1.98%)の値でより大きな改善を維持した(すべてのp < 0.001)。ロジスティック回帰分析では、水素吸入グループは追跡期間中にHbA1c<7%、≥7%から<8%、および1%以上の低下に到達する可能性が高く、一方対照グループの患者ではHbA1c ≥ 9%に到達する可能性が高かったことが明らかになった。水素吸入グループの患者は、低血糖症(2.0% vs 6.8%)、嘔吐(2.6% vs 7.4%)、便秘(1.7% vs 4.4%)、めまい(3.3% vs 6.3%)など、いくつかの有害事象の発生率が対照グループと比較して低く、その差は有意であった。

 

Conclusion: HI as an adjunct therapy ameliorates glycemic control, lipid metabolism, insulin resistance and AE incidence of T2DM patients after 6-month treatment, presenting a noteworthy inspiration to existing clinical diabetic treatment.

【結論】水素吸入は、6ヶ月の治療後に2型糖尿病患者の血糖コントロール、脂質代謝、インスリン抵抗性、有害事象の発生率を改善し、既存の臨床の糖尿病治療に注目すべき示唆を提供する。

 

Keywords: glycemic control血糖コントロール; hydrogen inhalation水素吸入; observational study観察研究; real world studyリアルワールド臨床研究; type 2 diabetes2型糖尿病.

 

Copyright © 2023 Zhao, Ji, Zhao, Liu, Sun, Li and Ni.

 

Conflict of interest statement: The authors declare that the research was conducted in the absence of any commercial or financial relationships that could be construed as a potential conflict of interest.

【利益相反】なし

 

 

 

英語 日本語 説明
retrospective study 後ろ向き研究 時間をさかのぼって個々の人の環境と

病気の状況を把握する、縦断研究の一

つ。疾病の人を「症例」とし、その集

団に対して性別や年齢などが似通った

健康人を「対照」として選び、両者の

生活習慣などを調査する手法。

observational study 観察研究 人為的、能動的な介入(治療行為等)

をせず、ただその場に起きたことやこ

れから起きることをみる研究方法。

臨床研究は治療や指導などの介入をす

る/しない・できないにより、介入

研究/観察研究に区分される。

double-arm study 比較試験 試験群(study arm)が対照群

(control arm)より臨床的に優れてい

ることの証明を目的とする比較試験。

real-life clinical study リアルワールド臨床研究 日常臨床現場において、さまざまな

背景を持つ患者にその薬が投与され、

処方の実態や治療効果、副作用など

のデータを実臨床で得て検証する研

究方法。

type 2 diabetes mellitus (T2DM) 2型糖尿病 インスリンの分泌量や効き具合が

低下し、血液中のブドウ糖(血糖)

が正常より多くなる病気。糖尿病患者

の95%以上が2型といわれ中高年に

多く発症する。初期の頃は自覚症状

がほとんどなく、血糖値を高いまま

放置すると年単位で全身の血管や

神経、臓器を少しずつ障害し重大な

合併症を引き起こす。

anti-diabetes medication 糖尿病治療薬 2型糖尿病において血糖値を正常化

させる目的で処方される薬物の総称。

慢性合併症のリスクを軽減させるの

が目的。その作用から大きく分けて、

「膵臓に働きかけインスリンを出さ

せる薬」「インスリンを効きやすく

する薬」「糖の吸収や排泄を調節す

る薬」の3つに分類できる。

propensity score matching (PSM) 傾向スコアマッチング(PSM) 無作為割付が難しく様々な交絡が生じ

やすい観察研究において、共変量を調整

して因果効果を推定するために用いら

れるバランス調整の統計手法。介入群

と対照群の結果を単純に比較して治療

効果を推定すると交絡変数によるバイ

アス(偏り)が発生する。このバイア

スを軽減するための手法。

交絡変数 統計モデル中の、独立変数(独立に変

化しうる変数)と従属変数(独立変数

の変化に応じて変わる変数)の両方に

(肯定的または否定的に)相関する外

部変数(分析研究で考察されている変

数以外の変数)が存在すること。

HbA1c ヘモグロビンA1c 赤血球中のヘモグロビンが血中のブド

ウ糖と結合したもの。過去2か月程度

の血糖値の平均的な状況(血液中の糖

分の状態)を評価する指標。糖尿病の

リスク(血糖コントロール状態)を判

別するために重要な指標。

glycemic control 血糖コントロール 血糖値を適切な範囲に維持すること。
fasting plasma glucose(FPG) 空腹時血糖 10時間以上食事を取っていない状態で

測定した血糖値のこと。空腹時血糖値

が100mg/dL以上になると“高血糖”と

呼ばれ、糖尿病や甲状腺機能亢進症、

肝硬変などの病気が疑われる。

血糖値 血液中に含まれるブドウ糖の濃度の

こと。糖尿病になって血糖値が高い

状態を放置すると、網膜症、神経障

害、腎障害などが起こりやすくなる。

低すぎても低血糖が起こる。

hypoglycemia 低血糖症 血糖値が下がりすぎてしまった緊急

の状態。糖尿病を薬で治療する人に

高い頻度でみられる。はじめは倦怠

感や手のふるえ、冷や汗などの自律

神経症状が起こり、重症化すると意

識消失や昏睡を起こし命にかかわる

危険な状態に陥る。

lipid profile 脂質検査 血液を採取して血液中の脂質の濃度

を調べる検査。総コレステロール値、

LDL:悪玉コレステロール、

HDL:善玉コレステロール、

中性脂肪などを測定し、生活習慣病や

動脈硬化のリスクを調べる。

total cholesterol 総コレステロール 血液中に含まれるすべてのコレステ

ロールを測定した総量。

コレステロール 細胞を包んでいる細胞膜の構成成分。

細胞膜やホルモンの材料となるなど、

健康維持に不可欠なものだが、多す

ぎるとLDL(悪玉)コレステロール

も過剰になり、動脈硬化を促進して

しまう。

homeostasis model assessment (HOMA) HOMA インスリン抵抗性とインスリンの

分泌能力(β細胞機能)を評価する

ために使用される計算式。

HOMA-IR(インスリン抵抗性)

とHOMA-β(インスリン分泌能)

の2つの指標が計算される。

homeostasis model assessment(HOMA-IR) インスリン抵抗性 インスリンの効きやすさ(インス

リン抵抗性)の指標。1.6以下であれ

ば正常、2.5以上であれば抵抗性が

あると判断され、その場合はイン

スリンがあっても効きが悪いこと

による糖尿病ということになる。

HOMA-β インスリン分泌能 インスリンの分泌能を診る指標。

80以上であれば分泌亢進、40未満

であればインスリンの分泌低下

によるインスリン不足による糖尿病

ということになる。

Logistics regression ロジスティック回帰分析 いくつかの要因(説明変数)から

「2値の結果(目的変数)」が起こ

る確率を説明・予測することがで

きる統計手法。

Adverse event (AE) 有害事象 医薬品を投与された被験者に生じ

た、あらゆる好ましくない医療上

の出来事(臨床検査値の異常を含

む)のこと。因果関係を問わない

もの。