「感染症になると熱が出る」これには大きな理由がある。
以前から「発熱は免疫細胞を活性化し、感染と戦うため」ということは言われていたが、その仕組みが解ってきた。
マクロファージという免疫細胞は感染が起こると病原体や異物を貧食し、内部で活性酸素を発生させて殺菌/破壊する。
その際に発生させる「過酸化水素:H2O2」という活性酸素が温度センサーである『TRPM2』を活性化し、体温を上昇させているようだ。
そして上昇した体温によってさらにマクロファージが活発化するという仕組みである。
また、TRPM2は正常状態では『38℃』で活性化するのに対し、過酸化水素の存在下では37℃の体温でも活性化することが解った。
そしてTRPMの活性化は『過酸化水素によるTRPM2の酸化』によることも解った。
ようるすに「感染と発熱のシステム」は
1:感染病原体をマクロファージが貧食
2:過酸化水素(活性酸素のひとつ)発生
3:過酸化水素がTRPM2を活性化
4:体温上昇
5:さらにマクロファージが活性化し病原体を貧食
という「免疫増強システム」のようだ。
「感染による発熱を解熱しすぎると免疫システムが低下して病気が長引く」という理由はここにある。
過酸化水素は
1:それ自体によるマクロファージ増強作用
2:発熱によるさらなるマクロファージ増強作用
をもつ『善玉活性酸素』ということであろう。
解りやすくは、活性酸素には『善玉と悪玉』が存在する。
【善玉】
*一酸化窒素:血管拡張作用など
*過酸化水素:免疫活性化作用など
【悪玉】
*ヒドロキシラジカル
*ペルオキシナノライト
*一重項酸素
活性酸素はすべて除去すればいいというものではなく「善玉を適度に維持し、悪玉を除去する」ということが重要である。
そのために必要な抗酸化物質をいかにコントロールするかが重要ということであろう。
我々が研究し、臨床利用する「水素」は
*善玉には反応せず、悪玉活性酸素のみを除去する
*悪玉との反応後は水となる(酸化型にはならない)
というメリットがある。
感染症においても、免疫のために増加した過酸化水素には反応しないが、過酸化水素から発生するヒドロキシラジカルという悪玉活性酸素は除去する。
我々が「抗酸化」ではなく「レドックス制御:酸化/抗酸化バランス」という言葉を使う理由はここにあるわけだ。